気候関連のコミットメント(IAS第37号)-IFRS-ICニュース
IFRS解釈指針委員会ニュース -「気候関連のコミットメント(IAS第37号)」については、2023年11月のIFRS-IC会議において新規に取り上げられました。
IFRS解釈指針委員会ニュース -「気候関連のコミットメント(IAS第37号)」については、2023年11月のIFRS-IC会議において新規に取り上げられました。
Article Posted date
18 January 2024
概要
委員会は、温室効果ガス排出量を削減又は相殺するという企業のコミットメントについて以下の質問を受け取りました。
- 当該コミットメントによって、当該企業に推定的義務が生じるか否か。
- 当該コミットメントによって生じる推定的義務は、引当金の認識に関するIAS第37号の要件を満たすかどうか。
- 引当金が認識される場合、その決済に必要な支出は、引当金の認識時に費用又は資産のいずれとして認識されるか。
前提となる事例は以下のとおりです。
- 20X0年に、家庭用製品の製造者である企業が、次のようなコミットメントを公式に表明する。 i. 現在の温室効果ガス排出量を20X9年までに少なくとも60%削減する ii. 20X9年以降に残存する排出量を、カーボン・クレジットを市場から購入し、それを償却することによって相殺する。
- 声明とともに、企業は、20X9年までに排出量の60%削減を達成するために、20X1年から20X9年の間に製造方法を段階的に変更する方法を示した詳細計画を公表する。この変更は、よりエネルギー効率が高いプロセスへの投資、再生可能エネルギーの購入、並びに既存の石油ベースの製品成分及び包装資材から低炭素の代替品への置換えを伴う。経営者は、企業がこれらの変更のすべてを行い、利益の上がる製品を販売し続けることができると確信している。
ステータス
委員会の暫定決定
委員会は2023年11月の会議で、上記の事例に基づき以下の検討を行いました。
- 温室効果ガス排出量を削減又は相殺するという企業のコミットメントに関する企業の声明によってIAS第37号第10項の推定的義務が生じるかどうかは、そのコミットメントについての事実とそれを取り巻く状況による。
- 企業の声明によって推定的義務が生じるとしても、コミットメントの公表時点では、推定的義務は過去の事象の結果としての現在の義務ではないため、引当金を認識しない。企業が20X9年以降に温室効果ガスを排出するのに応じて、過去の排出量を相殺するために必要なカーボン・クレジットを償却する現在の義務が発生する。過去の排出量を相殺するために必要となるカーボン・クレジットをまだ償却しておらず、当該義務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合には、企業は引当金を認識する。
- 引当金を認識する場合、引当金を決済するために必要となる支出によってIFRS®会計基準における資産の認識の要件を満たす項目が生じる(又は支出がその項目のコストの一部を構成する)場合を除き、そのような支出は費用として認識されることに留意した。
- 温室効果ガス排出量を削減又は相殺するという企業のコミットメントによって、引当金を認識するかどうかに関係なく、企業が当該コミットメントを果たすために実施を計画している行動は、さまざまなIFRS会計基準の要求により、企業が他の資産及び負債を測定する金額並びにそれらに関して開示する情報に影響を与える可能性がある。
以上より、委員会はIFRS会計基準上の扱いは明らかであるとして、本件に対処するための基準設定プロジェクトを作業計画(アジェンダ)に追加しないことを暫定的に決定しました。
暫定的なアジェンダ決定の詳細についてはASBJのサイトに公開されているIFRIC Update(2023年11月)をご参照ください。
コメント期限
2024年2月5日