東京証券取引所、「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について」を公表

2023年12月18日、東京証券取引所は「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について」を公表しました。

2023年12月18日、東京証券取引所は「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について」を公表しました。

1.経緯

2022年6月及び12月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(以下「DWG」という)報告において、金融商品取引法上の四半期報告書(第1・第3四半期)を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に「一本化」する方向性が示されるとともに、「一本化」の具体化における各論点の方向性が示されました。

DWG報告を受け、東京証券取引所(以下「東証」という)は、2023年6月に「四半期開示の見直しに関する実務検討会」を設置し、DWG報告で示された「一本化」の具体的な方向性に沿った実務の実現に向けて検討を重ね、2023年11月に「四半期開示の見直しに関する実務の方針」を公表しました。

また、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)(以下「改正金商法」という)が2023年11月に成立し、四半期報告書(第1・第3四半期)が四半期決算短信に「一本化」されることが確定しました。

これらを踏まえ、東証は、四半期開示の見直し等に関して、所要の上場制度の整備を行うために、2023年12月18日に「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について」(以下「本見直し等」という)を公表しました。東証の公表にあわせて、名古屋証券取引所、福岡証券取引所及び札幌証券取引所も、同じ内容を公表しました。

2.概要

本見直し等の主な内容は以下のとおりです。

(1)第1・第3四半期決算短信の取扱い

  • 開示事項第1・第3四半期決算短信では、少なくとも以下表の○が付された事項を開示することが求められます。見直し前の四半期決算短信では、四半期報告書の速報として、速報性が求められる事項に限定して開示が要請されていますが、四半期報告書が廃止されることに伴い、最低限の開示を担保する観点から、開示事項の義務付けが行われるものです。 なお、第2四半期決算短信については、現行の取扱いが維持されます。
  項目 見直し後 (参考)見直し前
第1・第3四半期決算短信 四半期決算短信 四半期報告書
本表 四半期連結貸借対照表
四半期連結損益計算書及び四半期連結包括利益計算書又は四半期連結損益及び包括利益計算書
四半期連結キャッシュ・フロー計算書 - - ○ (2Qのみ)
主な注記 継続企業の前提
株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記
連結・持分法の範囲の変更 - -
会計方針の変更、会計上の見積りの変更、修正再表示に関する注記
四半期特有の会計処理
連結範囲外の子会社等(重要なもの) - -
追加情報 - -
四半期BS・PL・CF・SS関係 CFのみ○ (本表を開示した場合は不要) -
金融商品関係 - - ○※
有価証券関係 - - ○※
デリバティブ取引関係 - - ○※
企業結合関係 - -
収益認識関係 - -
セグメント情報 -
一株当たり情報 - -
重要な後発事象 - -

※企業集団の事業の運営において重要であり、かつ、前事業年度末から著しい変動が認められる場合に注記が必要。また、企業集団の総資産や総負債の大部分を金融資産や金融負債等が占める場合を除き、第1四半期及び第3四半期は省略可。一方、IFRS®会計基準では、これらにかかわらず注記が必要(IAS第34号「期中財務報告」第16A項)。

出典:本見直し等及びDWG(令和4年度)資料2事務局参考資料(2022年10月5日)を基にあずさ監査法人作成

また、四半期財務諸表又は四半期連結財務諸表(以下「四半期財務諸表等」という)の作成方法については、「四半期財務諸表等の作成基準」が有価証券上場規程施行規則の別添として規定され、その他作成にあたっての留意事項は、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」において定められます。

  • 公認会計士又は監査法人によるレビュー第1・第3四半期決算短信における四半期財務諸表等に対する公認会計士又は監査法人(以下「公認会計士等」という)によるレビューを受けることは原則として任意とされます。 例外として、以下のいずれかの要件に該当した場合には、要件該当以後に開示する第1・第3四半期決算短信における四半期財務諸表等に対し、公認会計士等によるレビューが義務付けられます。
    • 直近の有価証券報告書、半期報告書又は四半期決算短信(レビューを受ける場合)において、無限定適正意見(無限定の結論)以外の監査意見(レビューの結論)が付される場合(注1)
    • 直近の内部統制監査報告書において、無限定適正意見以外の監査意見が付される場合
    • 直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合(注1)
    • 直近の有価証券報告書又は半期報告書が当初の提出期限内に提出されない場合(注2)
    • 当期の半期報告書の訂正を行う場合であって、訂正後の財務諸表に対してレビュー報告書が添付される場合(注2) (注1)直近の有価証券報告書、半期報告書若しくは四半期決算短信(レビューを受ける場合)又は内部統制報告書の訂正を行い、訂正後の報告書等において要件に該当する場合を含む。 (注2)財務諸表の信頼性の観点から問題がないことが明らかな場合として、当取引所が認める場合を除く。 なお、第2四半期決算短信における四半期財務諸表等については、現行の取扱いが維持され、第1・第3四半期決算短信における四半期財務諸表等についてレビューが義務付けられる場合であっても、レビューの対象外です。

(2)上場規則の実効性の確保

四半期報告書の廃止に伴い、東証における上場規則の実効性向上の観点から必要な見直しが行われるものです。

  • 上場会社に対する調査及び調査結果の報告の要請(会計不正等の疑義が生じた場合などに適用することを想定)
  • 公認会計士等との情報連携の強化(会計不正の概要を早期に把握するための仕組みを構築する観点から、公認会計士等に対して事情説明等を求める場合の上場会社の協力義務について適用範囲を拡大)

3.実施時期

本見直し等は、改正金商法の施行日(2024年4月1日予定)から実施されます。上記2.(1)「第1・第3四半期決算短信の取扱い」については、改正金商法の施行日以後に開始する四半期会計期間に係る第1・第3四半期決算短信から適用されます。

執筆者

会計プラクティス部 マネジャー 秋本 祐哉

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