日本のマネロン対策、次の一手

2021年8月に公表されたFATF第4次対日相互審査において、日本は「重点フォローアップ国」と評価され、第5次FATF対日相互審査で「通常フォローアップ」を目指すのであれば、官民で更なる対応が必要です。連載「日本のマネロン対策、次の一手」として15回にわたり連載します。

金融財政事情研究会「週刊 金融財政事情」2023年4月11日号、18日号への寄稿につき、同法人の許可を得て転載しました。

連載第11回・第12回

2023年6月30日、金融庁は、マネロン対策等について、2023年6月末時点の金融庁所管事業者の対応状況や金融庁の取組み等を「マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題」として取りまとめ、公表しました。その中で、海外送金サービスを提供する資金移動業者に口座を提供する銀行においては、顧客である資金移動業者が国内拠点と海外拠点との間で複数の小口送金取引を取りまとめて決済(いわゆるバルク送金取引)を行っている場合、小口送金の実態は国境を跨ぐ資金決済でありながら、バルク送金の中に含まれる個々の送金人や受取人に関する情報が不透明となるリスクがあると指摘しています(「現状と課題」14頁)。同様のリスクは、収納代行と呼ばれるサービスを提供する民間事業者(いわゆる収納代行業者)に口座を提供している銀行等においても生じており、銀行等からは個々の海外送金の送金人や受取人に関する情報が不透明になり、自らの預貯金口座を通じて犯罪に関係した資金決済が行われてしまうリスクがあると指摘しています(同15頁)。特に、オンラインカジノや風俗関連事業等、法律や公序良俗に反するサービスを提供している事業者の決済においては、国内で収納代行や決済代行と称するビジネスを行っている民間事業者や、国内で無登録の海外資金移動業者等が、資金決済を実行している可能性があるので注意が必要です。

また、NPOについては、金融機関においても、日頃から昨今の世界情勢やテロ資金供与の危険度が高い国・地域、取引等について情報蓄積及び分析を行うとともに、NPO が口座を開設している場合には、海外送金の有無や支援している地域や団体も踏まえ、リスクの特定・評価を行い、テロ資金供与リスクに対して、継続的かつ予防的なリスク対応を行うことが重要であると指摘しています(同19頁)。さらに、環境犯罪に関しても、FATF や国際的な議論を踏まえ、環境犯罪をリスクと認識して対応することが必要であり、国際的に希少な野生動植物・森林資源・鉱物に関する取引や廃棄物投棄等に関係した取引等を前提としている場合等には、マネロンのリスクを意識した対応を行うことが必要であると指摘しています(同20頁)。これらの課題について、「週刊金融財政事情」(一般社団法人金融財政事情研究会)6月27日号、7月4日号に掲載された連載記事、第11回「収納代行や決済代行におけるリスク」、第12回「NPO、環境犯罪とマネロン」として掲載されたものを転載しております。

寄稿の全文は、添付のPDFをご覧ください。

執筆者

あずさ監査法人 金融統轄事業部  金融アドバイザリー事業部 エグゼクティブ・アドバイザー 尾崎 寛

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